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根室でしかできないDEEPなこと

食べる前に知っておきたい!
根室のソウルフード「エスカロップ」に込められた、歴史と各店のこだわり

#エスカロップ #ローカルフード

筍入りのバターライスの上に、サクサクとした薄切り肉のカツ、食欲をそそるデミグラスソース。シンプルなワンプレートごはんである「エスカロップ」は、根室市内のさまざまな飲食店で提供されているご当地料理です。今回は元祖の味を受け継ぐといわれる「喫茶どりあん」「食事と喫茶 薔薇」「ニューモンブラン」の3店舗に加え、一風変わったエスカロップを味わえる店として「あんくる&チボリ」「レストランあっとこ」を紹介。5つのエスカロップそれぞれに、こだわりのおいしさがありました。
※記事の内容は2023年時点の情報になります

根室でエスカロップが広まったわけ。その歴史を辿る

始めにおさらいしておきたいのは、エスカロップの誕生ストーリー。どりあんの店主である小滝祥平さんに、その歴史を伺いました。

根室でエスカロップを作り始めたのは、昭和32年~40年に営業していたモンブランという喫茶店の3代目料理長を務めた、古村斤也(こむらきんや)さん。古村さんが新橋の洋食屋で働いていたとき、ナポリタンの上にカツを載せ、デミグラスソースをかけた「エスカロッピニー」というメニューがありました。その後勤めた横浜のイタリアンでナポリタンをチキンライスにアレンジした「エスカロップ」を提供しており、それをモンブランでも作っていたのです。「食べやすい味つけが良い」というお客さんの要望に応えてライスをバターライスに変更したものが、現在食べられているエスカロップの原型となります。

古村さんが根室に来たのは昭和38年。それから2年後、モンブランは閉店してしまいますが、シンプルなエスカロップは真似がしやすく、さまざまな喫茶店で提供されるようになったそう。当時の根室では、人口の増加と共に喫茶店がブームに。喫茶店が増えていくとともにエスカロップも広まっていきました。

▶駅前の通りにあるニューモンブラン。壁に大きく描かれたロゴが目印です。

古村さんが根室でエスカロップを作っていたのはわずかな期間でした。しかしモンブランでバーテンダーとして働いていた梅田勝利さんが昭和38年にオープンさせたのがニューモンブランであり、そこでもエスカロップを提供していたのです。レシピは習うものではなく、見て覚えていた時代。梅田さんも見よう見まねで作っていたのではないか、と小滝さんは推測しますが、モンブランで提供されていた元祖の味は、梅田さんによってニューモンブランへ受け継がれたと言えるでしょう。
その後、ニューモンブランで働いていた小滝さんの両親が喫茶どりあんを始め、さらに梅田さんが2店舗目として経営したサントリーテラで働いていた中村和雄さんが薔薇をオープン。この3店舗が、現在元祖エスカロップを味わえる店といわれています。

▶緑色の壁が印象的な喫茶どりあん。

▶レトロな看板が目立つ、食事と喫茶 薔薇。

守り続けてきた伝統の味。喫茶どりあん

少し多めのバターライスと、大きな薄切りのサクサクとしたカツ。酸味が効いた深い味わいのデミグラスソースのおかげで意外にもくどくはなく、むしろ手が進みます。
小滝さんいわく、デミグラスソースは最もこだわっている部分とのこと。オープン当初から継ぎ足しで、牛脂と小麦粉を炒めて作ったブラウンソースと、牛骨と香味野菜を一週間煮込んだものを合わせて濾し、混ぜているそう。こってりした組合せのエスカロップをスッキリと食べられるものにするため、酸味を利かせているのが特徴だと言います。50年以上、手を抜かずに伝統を守り続けてきた味です。

Information

インフォメーション

どりあん

根室市常盤町2-9
TEL.0153-24-3403
営業時間/10:00~20:00
定休日/火曜(祝日の場合は営業し、翌日休み)

メリハリの効いた味つけでペロリと。食事と喫茶 薔薇

▶『エスカロップ(1,100円)』。たくさん食べたい人向けに、大盛りの『マル特エスカロップ(1,950円)』もある。

バターライスは塩コショウがアクセントになっており、バターのほんのりとした甘さが際立ちます。デミグラスソースのコクも相性ばっちり。さっぱりしたドレッシングがかかったサラダが良い箸休めになっています。
中村さんに伺ったポイントは、ブラウンソースをバターと小麦粉を炒めて作ること。これにより、コクのあるデミグラスソースに仕上げていると言います。

Information

インフォメーション

食事と喫茶 薔薇

根室市弥生町2-9
TEL.0153-24-4746
営業時間/10:30~15:00、16:30~19:00
定休日/月曜

レトロな店内でいただくボリューミーな一皿。ニューモンブラン

▶『エスカロップ(1,000円)』。メニューには『オリエンタルライス(1,250円)』や『ビドックライス(1,100円)』など、気になる名前の料理が並びます。

昔ながらのかわいい銀皿に、こんもりと盛られたエスカロップ。バターライスはしっとりとして、バターの香りが風味豊か。淡い色合いのデミグラスソースは、酸味がしっかり効いています。
昭和38年にオープンしたニューモンブラン。3代目店主の佐野暢哉さんに伺うと、開店当初からレシピは変わらず、こだわりのデミグラスソースは継ぎ足して作っているそう。大鍋で何日もかけて煮込み、仕上げています。

Information

インフォメーション

ニューモンブラン

根室市光和町1-1
TEL.0153-24-3301
営業時間/10:30~15:00、17:00~20:00
定休日/不定休

自社飼育の根室短角牛を使って。レストランATTOKO

▶『和牛・根室短角牛のエスカロップ(1,380円)』。プラス200円で大盛りにすることもできる。

明郷☆伊藤牧場内にあるレストランATTOKOで味わえるのは、放牧で育てた根室短角牛のエスカロップ。赤身の肉質が特徴である根室短角牛のもも肉を使い、噛むほどに牛肉の旨味が味わえます。ソースは甘めで、バターライスには筍だけでなく玉ねぎも入っており、あっさりとした味つけです。
自社で育てている根室短角牛を食べてもらいたいという思いから生まれたこのメニュー。抽出した牛脂でライスを炒めたり、牛肉から出汁を取って作るビーフシチューを元にソースを仕上げたりと、全てに短角和牛が使われています。牧場直営だからこそ提供できる一皿です。

Information

インフォメーション

レストランATTOKO

根室市明郷101-21
TEL.0153-26-2288
営業時間/11:00~16:00(L.O.15:00)
定休日/火・水曜

旨味の強い鹿肉のエスカロップ。あんくる&チボリ

▶『えぞしかエスカロップ(1,100円)』。豚肉を使った一般的な『エスカロップ(1,100円)』もあるため、シェアして食べ比べてみても。

豚肉の代わりに鹿肉を使ったエスカロップ。柔らかく揚げられた鹿肉のカツは、旨味がしっかりと感じられつつ、脂肪が少ないためさっぱりといただけます。店オリジナルのデミグラスソースは香ばしい味わい。バターライスの筍は粗めにカットされていて、食感が楽しめます。
あんくる&チボリで鹿肉のエスカロップの提供を始めたのは約10年前。鹿肉のメニューを出し始めたのと同じ頃に、元々作っていたエスカロップを鹿肉にアレンジして作り始めたと言います。

Information

インフォメーション

あんくる&チボリ

根室市緑町2-28-28
TEL.0153-23-5523
営業時間/17:00~23:00
定休日/不定休

5つのエスカロップを食べてみて

根室のご当地料理、エスカロップ。このシンプルな料理の背景には根室の喫茶店文化の歴史があり、各店のこだわりや工夫がぎゅっと詰め込まれていました。

歴史を聞いて、何度もいただいて。エスカロップがなぜ根室のソウルフードとして愛され続けてきたのか、わかった気がします。今回ご紹介した5店以外にも、根室市内の多くの店で提供されているエスカロップ。出合った一皿を根室の思い出にするも良し。食べ比べて好みの味を見つけるも良し。皆さんが根室でエスカロップを楽しむお手伝いになれば幸いです。

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