▶店ではオランダせんべいのミミや1/4カットに加え、南部せんべいや卵せんべいも。あんこから手作りしているあんもちも人気だそう。
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根室でしかできないDEEPなこと
根室のローカルおやつ
「オランダせんべい」誕生ストーリー
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旅行中に食べたいものといえばやっぱり、その旅先でしか食べられないもの。真っ先に思い浮かぶのは野菜や海産物などの新鮮な食材ですが、ローカルな「おやつ」もそのひとつではないでしょうか。普段と違う地域の空気に包まれながら作りたてをいただく幸福感は、旅でこそ味わえるものです。根室にも、そんなローカルおやつが存在します。それが「オランダせんべい」。根室市千島町にある端谷菓子店が作り続けているお菓子です。
※記事の内容は2023年時点の情報になります
Contentコンテンツ
「オランダ」という地名と、丸くて平たいシンプルな見た目。一見、根室とのつながりは分かりづらいこのお菓子が、どうして根室で愛され続けているのか。その謎に迫ります。
端谷菓子店のオランダせんべい
お店へ伺ったのはお昼過ぎ。扉を開けると、お菓子屋さん特有の甘くて香ばしい香りと共に熱気を感じました。ガラス窓を一枚挟んだすぐ目の前で、オランダせんべいが絶え間なく焼き続けられています。
生地を流して、スプーンで広げて蓋を閉じて。ペダルを踏んで現れた次の蓋を開くと、あのオランダせんべいが姿を現します。行程はとてもシンプルですが、滑らかに焼いていくその手つきと初めて見る形の機械に、すぐに目を奪われてしまいました。
▶回転させながら焼いていく仕組み。流し入れた生地を広げる
▶蓋を閉じ、足元のペダルを踏むと、次に現れるのは一周して戻ってきた型。中には焼きあがったオランダせんべいが。
オランダせんべいのことを教えてくれたのは、端谷陽介さん。端谷菓子店の専務取締役として、日々オランダせんべいを焼いています。
元々は南部せんべいをメインに作っていた端谷菓子店。オランダせんべいを作り始めたのは1955年(昭和30年)のことです。当時ほかのお菓子屋さんで作られていたオランダせんべいを端谷菓子店でも作ることに。ほかにはない黒砂糖味で、少し大きめに。食感は柔らかく。そんなオリジナリティを加えつつ誕生したのが、端谷菓子店のオランダせんべいです。
名前と食感に秘められたストーリー
一番の謎だった「オランダ」という名前は、なんと長崎にルーツがありました。長崎県にあるオランダ坂の石畳がそのままオランダせんべいの模様になっていると言われています。
せんべいをよく見てみると、4つの区画それぞれの模様が異なっていることに気が付きました。魚の仕入れなどで交流があったのか、それとも長崎を訪れた根室の人が石畳の模様を気に入って持ち帰ったのか。4つの模様を眺めながら、遠く離れた長崎と根室のつながりに想像が膨らみます。
そして大きな特徴である、独特のもっちりとした柔らかな食感。その秘密は生地の配合や焼くスピードの調整に加えて、根室の気候。暖かい時期は湿気があるため、より柔らかい食感になるそう。逆に冬の乾燥した時期は、少しパリッと焼きあがります。
実はここにも裏話が。元々のオランダせんべいは、固い食感だったと言います。当時、根室市にはいくつかの映画館がありました。そこで劇場内で音を立てずに食べられるよう、端谷菓子店のオランダせんべいは柔らかい食感にしたそう。
始めは「どうしてこのお菓子が根室銘菓なのだろう?」という疑問でいっぱいだったオランダせんべい。話を聞いて思い浮かんだのは、このオランダせんべいを生み出した当時の根室の人たち。その人たちがいた、この土地だからこそ生まれたお菓子なのだということがわかってきました。
創業当時より守り続けてきた、伝統の味
陽介さんは、オランダせんべいを焼き続ける父や祖父の姿を小さい頃からずっと見てきたと言います。「子どものときは恥ずかしかったです。学校の迎えも配達の車で」。一方で、就職で根室を出てからは、たまに帰ってくると「根室っていいなあ」と思っていたそう。後を継ぐために25歳の時に戻り、昔からのやり方を引継いでオランダせんべいを作り続けてきました。「伝統の味を守っていきたい。最低でも100年は続けたい」。生地の配合も作り方も、変えていないと言います。
客は根室に住む人たちや観光で訪れた人々。お盆時期には、里帰りの人たちがお土産に買っていくことも多いそう。根室で暮らす人たちにとっては昔から日常的にあるものなのでしょう。創業当時からずっと変わらないこのおやつは、根室の人たちにとって、ふるさとの味なのだと思います。
焼き立てを食べながら思うこと
取材終わり、買ったばかりの焼き立てのオランダせんべいを早速いただきました。薄くて柔らかな生地をちぎった瞬間、黒砂糖のこっくりとした甘い香りがふんわりと漂います。かぶりつくと歯に一瞬だけまとわりつくようなねっちり感が。初めて食べたはずなのにどこかほっとする懐かしさを感じ、思わず笑みがこぼれました。
1枚の大きなオランダせんべいをちぎってシェアしながらイメージしたのは、日常にあるおやつの時間。きっと根室の人たちも、家族や友達とこうして食べる景色が暮らしの中にあるのだろうと思いました。おやつを食べながら根室の人たちの暮らしを思い浮かべる。新たな根室らしさの味わい方を見つけました。
Information
インフォメーション
端谷菓子店
住所 根室市千島町2-11
電話番号 0153-23-3375
営業時間 8:00~17:00
定休日 日曜日
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