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根室でしかできないDEEPなこと

根室っ子の誇り
金刀比羅神社例大祭の
裏側で

#お祭り #根室の魅力

神社にとって最も大切な神事である例大祭。金刀比羅神社で毎年8月に行われる例大祭は、北海道三大祭りの一つと呼ばれるほど、にぎやかな祭りです。きらびやかな神輿や祭典区の工夫を凝らした山車がまちを練り歩く、華やかな行列が大きな見どころ。その文化としての重要性が認められ、令和2年には北海道の無形民俗文化財にも指定されました。地域の人々にとって誇りである、金刀比羅神社の例大祭の裏側に迫ります。
※記事の内容は2023年時点の情報になります

200年以上の歴史を持つ、地域の祭り

1888年に始まった、金刀比羅神社の例大祭。祭りは3日間にわたって行われ、大きな盛り上がりを見せるのが2,3日目に行われる神輿渡行です。神社行列に4つの祭典区が続き、総長1kmにも及ぶ行列が町を練り歩きます。神様が移った神輿が市内を巡り、人々は地域の安全や五穀豊穣を願うのです。港町である根室では昔から信仰が厚く、祭りは盛大に行われます。

▶神社行列では奴行列を先頭に猿田彦、巫女、獅子、祭具車輌などが続き、神輿は若者たちにより奉担されます。(写真提供/金刀比羅神社)

▶神社行列の跡に続く、祭典区の行列。(写真提供/金刀比羅神社)

祭りを成り立たせるために一番大切なのは、「人」の存在。担ぎ棒を含めると1.5tもの重さになる神輿を担いで市内を周るには、120人の担ぎ手が必要となります。担ぎ手は「金刀比羅神社みこし会」に所属する16団体で決められ、各団体で次の世代へと引継ぎ、担ぎ手を育てています。
祭典区でも受け継がれる技術があります。「西部祭典区」「第一祭典区」「東部祭典区」「第三祭典区」の4つの祭典区があり、それぞれの行列は旗持ち、先太鼓、金棒、山車など10の部門で構成されいてます。太鼓の音色や山車のつくりは各祭典区で独自のもの。たたき方や作り方は、高校生や若者を中心に子どもたちへと教えられています。

▶2日目の神輿渡行の後、夕方ごろから行われる「音と力の競演」。4祭典区の山車が御旅所に集結し、お囃子や先太鼓を披露します。

引き継いでいかなければならない、伝統と思い

コロナ禍の影響により4年ぶりの開催となった2023年。金刀比羅神社の宮司として例大祭を取り仕切った前田穣さんは、「同様の規模の祭りを再び行えるのか、という不安は大きかった」と話します。

▶前田譲さん。2023年の7月から、金刀比羅神社の宮司を務めます。

前回の祭りから期間が空いたことで、開催にはさまざまな課題がありました。人口や地域企業が減少した中で人は集まるのか、受け継がれてきた技術は途切れないか、人々の気持ちが祭りから離れてしまっていないか。例年より早く、前年の11月から準備を始め、人々が参加しやすいようにと104年ぶりの日程変更が決まりました。久しぶりの祭りを成功させるため、多くの人が力を尽くしていたのです。前田さんが宮司を引き継いだのは、そんな祭り直前の7月のこと。「神社と祭典区それぞれに、担ってきた誇りや、一つの祭りを成功させようという思いがある。その分、責任とプレッシャーがありました。長い伝統の祭りを守り次いでいかなければと思っていました」と振り返ります。

祭典区連絡協議会で会長を務める佐藤美喜夫さんも「人を集めるのには苦労した」と言います。特に重要なのが、文化の受け取り手である子どもたち。「文化だから、受け継いでいかないと守っていけない。子どもの頃から馴染んで地元に残っているからこそ『お祭り』というものがわかると思います。これだけの規模の祭りは、突然ぽんとやれるものではありません」。チラシや新聞記事、学校での呼びかけなど、さまざまな方法で人を集めました。

▶佐藤美喜夫さん。祭典区連絡協議会は祭典区の事務局の役割を担っています。参加者の多い祭典区をまとめる、重要な存在です。

迎えた祭り当日。根室のまちは近年にない盛り上がりを見せました。行列には1100人が参加し、集まった露店の数は130軒。コロナ禍前よりは減ったものの、沿道や夜の催しの会場には多くの人が集まりました。根室の祭りを、みんな心待ちにしていたのです。「開催できなかった3年間、映像で音は聞いていましたが、初日で生の太鼓の音を聞いて、涙が出そうになりました。生は良いな、と感動して」と前田さん。
今後の開催について「本質は守りながらも、守るためには変化も受け入れていきたい」と前田さんは言います。神輿を人力で運ぶことは、担ぎ続けることに誇りやプライドを持っている人もいるから続けていく。祭典区の先太鼓やお囃子、山車には、各地区の個性が表れているから受け継いでいく。現実を見つめながらも守るべき伝統は変えずに。金刀比羅神社の例大祭はこれからも引き継がれていくのでしょう。

祭りへの誇りを感じて

金刀比羅神社の敷地内には、例大祭の資料館があります。「もっとお祭りを身近に感じて欲しい」という思いから、17年前に作られました。祭りで実際に担がれている神輿をはじめ、数々の写真や道具が展示されており、祭りのにぎわいの様子がうかがえます。

▶館内では祭りの動画も流れ、壁一面に貼られた写真には人々の活き活きとした表情が写し出されています。観光客はもちろん、地元の人々も時折訪れるのだそう。

取材を重ねるうちに見えてきたのは、伝統を守ろうとする熱い思い。技術だけではなく、地域への誇りや祭りへの情熱も受け継がれていたのです。「例大祭の魅力は、それぞれが祭りに誇りを持っていることです。次世代につないでいこうという思いがひしひしと伝わる。その思いに感動しています」と、前田さんは噛みしめながら話してくれました。
根室の人々の思いが積み重なり、今日まで受け継がれてきた、金刀比羅神社の例大祭。いつか肌で感じてみたいと思います。

Information

インフォメーション

金刀比羅神社

根室市琴平町1-4
TEL.0153-23-4458
開館時間(社務所、神輿殿、お祭り資料館)/8:30~17:00
※1/15~3/15の冬季期間の開館時間は9:00~16:30
※参拝は24時間可能です。

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