根室の秋の風物詩
根室さんま祭り
毎年秋に行われる「根室さんま祭り」。旬のサンマを味わおうと、地元の人はもちろん、各地から多くの人が集まります。設置された炭火台で参加者自らサンマを焼いて食べるのが、このイベントの醍醐味。香ばしい匂いが広がる会場では、サンマを使った料理の提供やサンマのつかみ取りなども行われ、サンマを心ゆくまで楽しめます。
今では根室を代表するイベントの一つとなった根室さんま祭り。始まりは1993年、地元のまちおこしグループが花火大会でサンマを焼いて配るところからスタートしました。当時は今ほど人気がなく、サンマが余ってしまったと言います。しかし回を重ねるごとに来場者が増え、2000年には根室市や観光協会も運営に関わるように。年々規模が大きくなる中で、サンマを参加者に焼いてもらうスタイルにしたり、無料配布からトレーを購入するかたちにしたりと、続けていくための工夫も行ってきたそう。何よりも、漁業者をはじめとした地域のさまざまな団体からの協力があってこそだと言います。
多くの人の思いによって今日まで続いてきた根室さんま祭りは、根室の秋の風物詩となっています。
根室の美味しさを一口で味わって 根室さんまロール寿司
コンブで巻かれた印象的な見た目の巻き寿司。大葉とネギの緑が鮮やかで、食欲をそそります。一切れ頬張ると、サンマの甘みと昆布のうま味が混ざり合い、甘酢がさっぱりと全体をまとめています。「根室さんまロール寿司」は、2008年に誕生した根室のご当地グルメ。その開発のきっかけとなったのはコンブでした。
コンブの生産量が国内トップの北海道。根室も主要な生産地の一つです。一方でコンブの消費量は少なく、「食べるもの」としての認識は広まっていませんでした。
そこでコンブの消費量を増やすために考えられたのが「コンブの巻き寿司」。一般的には海苔で巻かれていますが、根室ならではのインパクトがある巻き寿司にするため、コンブで巻くというアイデアが出されました。使用するコンブには根室産の棹前昆布を採用。さらに根室らしさを高めるため、具材には水揚げ日本一である「サンマ」と、近年漁獲量が増えている「マイワシ」が選ばれました。試行錯誤を重ね、完成したのが「根室さんまロール寿司」「根室いわしロール寿司」です。サンマの漁期である8月~11月にはさんまロール寿司を、他の時期にはいわしロール寿司を食べることができます。
この2品を提供しているのは、「根室さんまロール寿司推進協議会」に加盟している根室市内の6つの飲食店。どの店舗でも同じものを味わえるよう、味や見た目、調理工程などについて10個の定義が決められているというこだわりぶり。食べる昆布の習慣を広めたい、という思いを持つ店舗が集まり、美味しい根室さんまロール寿司や根室いわしロール寿司を提供しています。
【MEMO】
「根室さんまロール寿司」「根室いわしロール寿司」は、根室市内の以下の6店舗で提供されています。
和ダイニングすしもと、すし善、村さ来、すしと魚貝料理の魚川岸浜作、明郷伊藤☆牧場レストランATTOKO、旬魚旬彩苑庭
福とサンマを持ち帰って
福ざんまいみくじ
金刀比羅神社で行われている「福ざんまいみくじ」は、ちょっとユニーク。張り子で作られたサンマを吊り上げて引くおみくじなのです。
「福ざんまいみくじ」が生まれたのは2015年。元々タイを吊り上げるおみくじを行っていましたが、「せっかくなら、地元で穫れるものでやりたい」と、現在宮司を務める前田穣さんがサンマのおみくじを思いついたそう。「根室がサンマの水揚げ日本一だと知らない人も多くて。全国にPRするきっかけになれば、と思ったんです」。
さらにこのアイデアを神社の集まりで提案したところ、他の神社からも賛同の声が。こうして、その土地の代表的な食べ物や動物をモチーフにした「えぞみくじ」は北海道各地へと広まっていき、今では道内15の神社に工夫を凝らしたおみくじがあります。
飾りたくなるような可愛らしい張り子や、北海道弁で書かれたおみくじなど、クスリと笑ってしまうような仕掛けがたくさん用意された福ざんまいみくじ。これも「神社を楽しくて身近なスポットとして感じて欲しい」との思いからです。実際にこのおみくじを目当てに来る観光客も多いそう。旅行の思い出に良い写真を撮ってもらえたらと、撮影用のグッズも用意されています。
「おみくじを通して北海道や神社のことを知って欲しい」と話す前田さん。各地のえぞみくじを集めて回るのも、楽しいかもしれません。
サンマのうま味をぎゅっと凝縮 さんま節ラーメン
やきとり弁当で有名なタイエーがさんま節ラーメンを生み出したのは2003年。当時のサンマは今よりも大ぶりなものが多かったため、「ジャミサンマ」と呼ばれる小さなサンマは店頭にも並べられず、その活用について漁業関係者は頭を悩ませていました。
そこでタイエーの社長である田家徹さんが相談を受け、開発したのが「さんま節」。サンマを焼き、さらに湯煎で脂を落としたものを乾燥させてそぼろ状にしたもので、手間暇をかけてさんまの旨味を凝縮しました。そのさんま節をスープにしたのがさんま節ラーメンです。当初は根室さんま祭りでのみ提供されていましたが、「1年に1度しか食べられないのはもったいない」との思いから、2019年に商品化されました。
手軽に食べられるカップ麺タイプと、よりスープの濃さが際立つ袋めんタイプの2種類。サンマの出汁が効いたスープはシンプルでありつつも味わい深く、汁まで飲み干してしまいそうなほど。好みの具材をトッピングすれば、より満足感がアップします。おすすめはスープとの絡みが良いホウレンソウだと言います。
自宅で味わうのはもちろん、お土産にもおすすめの一品です。
【MEMO】
「さんま節ラーメン」は根室市内のタイエー各店舗で購入できます。