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日本本土の東の最果てで心の洗濯を。冬の根室2泊3日の旅

日本本土最東端の街・根室では、どんな一人旅ができるのでしょう。一人の旅人ライターが過ごした2泊3日の模様を紹介します。
※記事の内容は2024年時点の情報になります

Pickupピックアップ

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  • 食事

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2泊3日 滞在スケジュール

1日目
10:30 釧路空港
12:30 チーズ工房 chikap
14:00 道の駅スワン44ねむろ
15:00 マイウィング
16:00 照月旅館

2日目
10:00 根室金刀比羅神社
12:00 明治公園
13:00 納沙布岬
14:30 碓氷勝三郎商店

3日目
10:00 チェックアウト
11:00 マルシェ・デ・キッチン
12:00 あま太郎
14:00 春国岱
15:00 レストランATTOKO
17:30 釧路空港

異世界の根室へ

羽田空港から約1時間半で釧路空港へ。そこからさらに東へ約140km、約2 時間30分ほど車を走らせると、道東の果て、根室市へ辿り着きます。

冬の北海道には大雪が積もるイメージがありますが、釧路や根室がある道東エリアの降雪量は実はそれほど多くありません。寒さこそ厳しいものの、冬の晴天の凛とした空気が気持ち良くて、思わずふぅっと深呼吸したくなるはず。

釧路空港からの距離が地図で見るよりも遥かに遠く長く感じられるのは、きっとここが日常で見ている光景とはあまりにもかけ離れた世界だからでしょう。

レンタカーを借りる際に「今のシーズンは野生動物との衝突事故が多発しているからくれぐれも運転には気をつけて」と忠告を受けたものの「まさかね…」と半信半疑でいたら、2時間ほど車を走らせたころにまんまるとした野生のキタキツネに遭遇しました。ひとりひっそりと大興奮。

さらには人間くらいの大きさのエゾシカの群れにも遭遇。車を停めて、息を押し殺し、カメラのシャッターを切りました。

日本にもこんな風景が存在していたのか……!北の大地に生息する生き物たちの美しい姿に心を動かされた瞬間でした。

牛を大切に育てているチーズ工房 「chikap」

ロングドライブの末に行き着いた根室市内。国道44号線を走っていると、ぽつんと佇む小さな建物を見つけることができました。ここはチーズ工房「chikap(チカプ)」です。チカプとは「鳥」という意味のアイヌ語で、野鳥が飛び交うこの地にちなんでつけられた店名だそう。扱っている商品にも鳥の名前がつけられていました。

チーズの原料となる生乳は、工房の裏に広がる牧場で酪農を営むご夫婦が搾っています。広い放牧地で草を食みながら過ごす牛たちは長生きでとても元気そう。健康的な牛たちから生み出された生乳は、季節によって風味の違いが楽しめるそうです。

冬のおすすめは「シマエナガ」。生乳を一晩かけてゆっくり発酵させたクリーミーなチーズです。若いうちはほどよい酸味と軽い塩気があり爽やかな味わいですが、熟成が進むとより口当たりが滑らかになりこっくりとした味わいを楽しめるそうです。

こだわりのチーズはドリンクとのペアリングを楽しみながらいただきました。「シマエナガ」は白カビの生えるカマンベールチーズで、シードルやカルヴァトスといったリンゴのお酒との相性が抜群。カマンベールもシードルもフランスのノルマンディ地方の名産品なので、同郷のアイテム同士で最高のマリアージュを味わうことができました。

Information

インフォメーション

チーズ工房 chikap

住  所/北海道根室市川口54-3
https://chikap.jp/

ダイナミックな景色を楽しめる道の駅 「スワン44ねむろ」

国道44号沿いをさらに進むと突如として近代的な建物が現れました。これは根室市で唯一の道の駅である「スワン 44ねむろ」です。建物は全面ガラス張りになっており、快適な空間で風蓮湖と春国岱が織りなす絶景を眺めることができます。

風蓮湖には年間を通してさまざまな野鳥が訪れます。春から秋にかけてはタンチョウが子育てをし、秋からはオオハクチョウが羽を休め、冬にはオオワシやオジロワシが優雅に空を舞う……。根室の大自然を堪能できる施設です。

Information

インフォメーション

道の駅スワン44ねむろ

住  所/北海道根室市酪陽1番地
https://www.swan44nemuro.com/

ぬくもり溢れる空間でとびきりのエスカロップを味わう「自家焙煎珈琲&カフェ マイウィング」

国道44号線沿いの根室市立北斗小学校のほど近くに佇むのは、創業40年の自家焙煎珈琲や地元素材にこだわった料理を提供するダイナーです。

ログハウスの佇まいに、ウエスタン調のどこか無骨な木の温もりを感じる内装。薪ストーブ、ピアノ、ボンボン時計、スキー板に至るまで、店主のセンスがぎゅっと詰まっています。

「マイ ウィング」の店名は、店主の趣味のハングライダーの翼に由来しているのだそう。時速120から130kmくらいのスピードで根室の野鳥たちと並走して飛んだ時はとても感動したと話してくれました。

根室市民のソウルフードとして知られるエスカロップはマストイートです。エスカロップはフランス語で薄切り肉という意味。「マイ ウィング」のエスカロップにはミルフィーユ状にしたカツに少し酸味が効いたデミグラスソースがたっぷりかかっており、バターライスによくあいます。エスカロップはお店によって少しずつ違いがあるので食べ比べてみると楽しいかもしれません。

Information

インフォメーション

自家焙煎珈琲&カフェ マイウィング

住  所/北海道根室市光和町1丁目23
https://www.mywing.info/

根室の旬を心ゆくまで堪能「照月旅館」

宿泊先は、料理が自慢の希少な老舗旅館「照月旅館」に決めました。明治時代創業のレトロな客室と共同風呂は趣があり、端正に磨かれた床が心地よい旅館です。

夕食には、根室の味覚を代表する真っ赤な花咲ガニが登場。御膳には名物の雲丹茶碗蒸し、たらば蟹のうちこ、牡丹海老の合わせ、カジカの肝とナマコの味噌和えなどが並びました。どれも素材の味が引き立つように一つひとつ丁寧に料理されていると感じます。

朝食は焼き魚を中心とした定食で「鉄砲汁」と呼ばれる花咲ガニの味噌汁がついていました。花咲ガニの出汁が効いた一杯で、朝から幸せな気持ちになれます。短い滞在期間であってもに根室の旬の味をたっぷり堪能できるので、リピーター客が多いのも頷ける宿でした。

年始は毎年1週間ほど休業になるそうなので、予約する際は要注意です。

Information

インフォメーション

照月旅館

住  所/北海道根室市梅ヶ枝町2-3
電  話/0153-23-4458
https://primenet2010.biz/shogetsu/

ユニークなおみくじを引ける「根室金刀比羅神社」

2日目の朝はまず、道内屈指のパワースポットへ。根室金刀比羅神社は、北洋漁業開拓者の高田屋嘉兵衛が漁場請負中に守護神として御三神を祀ったのが始まりと伝えられています。

根室金比羅神社では、備え付けの竹製釣りざおを使ってサンマを釣り上げる、「福ざんまいみくじ」を引くことができます。根室はサンマの水揚げ量日本一。多くの福で溢れるため、それにあやかっているのです。

境内の展望台からは弁天島を見ることも。毎年9月の第2日曜日だけ渡し船が出て、弁天島の市杵島神社に参拝できるそうです。

Information

インフォメーション

根室金刀比羅神社

住  所/北海道根室市琴平町1丁目4番地
https://www.nemuro-kotohira.com/

赤い屋根の可愛らしいサイロがシンボル「明治公園」

根室市内には歴史的な公園もあります。明治公園は北海道では2番目に古い公園。明治8年に創設された牧場の跡地を利用しており、登録有形文化財や日本の歴史公園100選に選出されています。シンボルはレンガ造りの可愛らしい赤い3基のサイロ。公園は根室市民の憩いの場になっていて、年中散策をする人が訪れます。園内のバーベキューコーナーでは、夏場になると多くの人々が楽しげにバーベキューを囲む姿が見られます。
園内にはチシマザクラが植樹されており、毎年5月には日本一遅い春の訪れを告げてくれます。

Information

インフォメーション

明治公園

住  所/北海道根室市牧の内81
https://www.nemuro-kankou.com/tourism/scenicspots/

日本で一番、朝日が早く上る場所「納沙布岬」

さらに足を伸ばせば、本当に日本の地の果てに行くこともできてしまいます。納沙布岬は本土最東端(北緯43度23分、東経145度49分)に位置する場所。道内で最も早く日が昇るとして有名な観光名所で、毎年元日には北海道の平地で一番早い初日の出を拝みに全国各地から多くの観光客が訪れます。冬はAM6:30前後、夏はなんとAM3:30過ぎに日が昇り、沖縄県那覇市より2時間近くも早く朝を迎えます。

海の向こうには歯舞群島を遠望することができ、北方領土問題について理解を深める良い機会に。この地のアイコンとも言える灯台は、残念ながらこの日は改装中のため覆われていました。

道の駅ならぬ「岬の駅」は、最東端の海と北方四島を見渡しながらほっと一息つける休憩所。限定ステッカーなど、ここでしか手に入らない土産物を購入することもできます。

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インフォメーション

納沙布岬

住  所/北海道根室市納沙布
https://www.nemuro-kankou.com/tourism/scenicspots/

銘酒「北の勝」の醸造所「碓氷勝三郎商店」

根室の街でひときわ歴史を感じさせる建造物は、明治20年創業の醸造所。日本最東端の酒蔵で銘酒「北の勝」を醸造しています。根室の街も太平洋戦争末期は空襲に見舞われましたが、この建物は被災を逃れ、創業時からの形で現存しているのだそう。蔵や事務所は公開していないので、外観を眺めることで根室の歴史に思いを馳せます。

「北の勝」は芳醇な香りとキリッとした味わいが特長。飲み飽きず、食事にもよく合うため地元にファンが多いお酒です。全国にはあまり出回っていないので、ぜひ根室市内の酒屋やスーパーマーケットで購入しましょう!

Information

インフォメーション

碓氷勝三郎商店

住  所/北海道根室市常盤町1丁目6
https://www.marimo.or.jp/~honda/cybermkt/mall/usui/seihin01.html

根室市民の台所「マルシェ・デ・キッチン」

ローカルスーパーを訪れるのも旅の楽しみの一つ。最終日は、お土産を探しに「根室市民の台所」と名高い地元の老舗スーパーマーケット「マルシェ・デ・キッチン」を訪れました。お店の前には、開店時間の10分ほど前からお客さん続々と列をなします。このスーパーこそが、40年もの間、根室食文化を支え続けてきました。

「マルシェ・デ・キッチン」では山森製パン、鮮魚を扱う武藤商店など、根室で有名なご当地ブランド品を購入できるほか、お土産にもぴったりなアイテムを買い揃えることができます。店内にはできたての大判焼きを売る「あま太郎」が入っており、ご当地スイーツを味わうことも可能。地域性が曖昧になりつつある現代において、このようなローカルスーパーは、地域の食文化を守り、次世代へ繋げていく架け橋になっていくことでしょう。

Information

インフォメーション

マルシェ・デ・キッチン

住  所/北海道根室市大正町1丁目32番地1
https://marche-nemuro.main.jp/

地元から愛され続けている甘味処「あま太郎」

「マルシェ・デ・キッチン」で出会った「あま太郎」の本店が近くにあると聞いて、急遽立ち寄ってみることに。昭和33年創業で「根室といえばここ!」と言っても過言ではないほど、地元の人々から長く愛されている甘味処です。大判焼き、中華まん、蒸しパン、ソフトクリームなどがあり、お手頃な価格で購入できるのが魅力。

店主がその場で手際よく作る大判焼きは、定番の餡子に加えてカスタード、チーズクリーム、ハムチーズなどがあり、種類が豊富であれこれ試したくなります。
店内にはイートインスペースがあるものの、まとめてテイクアウトする人が多い様子。もくもくと立ち上がる蒸気に誘われて足を止める人もいました。
凍てつくような寒さの中で食べる出来立て熱々のキムチまんは最高のおやつになりました。

Information

インフォメーション

あま太郎

住  所/北海道根室市緑町2-16
https://www.nimuoro.com/SHOP/437616/list.html

野鳥の楽園「春国岱」

旅の終盤には、根室十景の一つ春国岱へ。春国岱は、根室半島のつけ根に位置する風蓮湖と根室湾の間に横たわる長さ8km、最大幅1.3km、面積約6000haの砂州で形成された湿地帯です。

市街地からほど近い場所にありながら、手付かずの自然が残された奇跡のような場所。砂地の上には緑が生い茂り、海岸とは思えないような幻想的な風景が広がっています。エリア内には5つの自然観察路があり、コースごとに異なる春国岱の表情を楽しめます。

春国岱は、国内屈指の野鳥の楽園として知られており、これまでに約340種の野鳥の生息が確認されています。

毎年1月下旬はバードウォッチングに最適なシーズン。「ねむろバードランドフェスティバル」が開催され、全国から多くの野鳥愛好家が訪れ厳寒の中で野鳥の観察を楽しみます。

Information

インフォメーション

春国岱

住  所/北海道根室市東梅103番地
https://www.marimo.or.jp/~nemu_nc/workn/

心も身体も温まるイタリアン「レストランATTOKO」

美しい風景で心が満たされたら、お腹も満たして帰路へつきましょう。「レストランATTOKO」は明郷伊藤☆牧場の敷地内に佇むイタリアンレストラン。古い牛舎の梁を巧みに再利用した斬新なデザインで、三角屋根の窓からあたたかな日差しが降り注ぎます。

メニューは北海道産の素材にこだわっています。牧草だけで育った自社飼育の日本短角和牛を使ったビーフシチュー、エスカロップ、根室短角牛のハンバーグステーキが人気。根室いわしロール寿司(要予約)も名物です。
隣接する動物園では、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ニワトリ、ポニー、ドサンコとのふれあいを楽しむこともできます。

Information

インフォメーション

レストランATTOKO

住  所/北海道根室市明郷101-21
https://restaurantattoko.jimdofree.com/

五感がフル稼働する2泊3日

朝日にいちばん近い街、根室。筆者は初めて訪れたため、好奇心のおもむくままにスケジュールを詰め込んでしまい、ちょっぴり慌ただしい旅になってしまいました。それでも、滞在中は五感がフル稼働し、充実した2泊3日となりました。少し無理をしてみるのも旅行の楽しみ方の一つなのでしょう。おかげでなぜだか身も心もすっきりとして帰路につくことができました。

果てのない大空、心地よい風、自由に飛び交う野鳥、堂々と闊歩するエゾシカ、孤高のキタキツネ。
北の大地でしか出会えない美しい自然景観と野生動物、そしてそれらを大切に守ってきた心温まる地元の人々との出会いに、心が洗われるような気分になりました。

次に訪れるときは、何をするでもなく、この雄大な手付かずの自然に身を任せてみようかと思います。日常のあらゆるものを手放して、ただただ無になるだけの時間を生み出したいです。日本の最果ては、そんなことが許されそうな特別な場所でした。

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